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見返り横丁|由来(360°VRカメラ)

文学と神楽坂

「見返り横丁」は、どうしてこの名前になったのでしょうか?

 もうひとつの「見返し横丁」はわかっています。平成10年(1998年)の雑誌「ここは牛込、神楽坂」第13号「路地・横丁に愛称をつけてしまった」で……

井上 さて、それで本多横丁に出て、すでに名前がついている「見返り横丁」。これはいい。で、その先の「鳥静」の脇の横丁も何か名前をつけてあげたい。敷石がゆるやかなS字を描いていて「見返り横丁」よりも長い。そこで『見返し横丁』ではいかが。
林  昔はあそこは抜けられた。道らしい道じゃなかったけど。
註  井上元氏はインタラクション社長
   林功幸氏は「巴有吾有」オーナー

 林氏の「昔はあそこは抜けられた」は、見返し横丁のことですね。
 では、もとに戻って「見返横丁」はいつ、どこで、とんな理由で決まったのでしょうか? 上の1998年には「すでに名前がついている」ということなので、1998年以前からありました。

 まず地図はあるのでしょうか? 1994年の「神楽坂輿地全図」では「本多横丁」は確かに書かれていますが、「見返り横丁」はありません。「かくれんぼ横丁」もありません。また毎年でる「ゼンリン住宅地図 新宿区」、2013~6年の神楽坂通り商店会「神楽坂マップ」、1985年神楽坂青年会の『神楽坂まっぷ』には「見返り横丁」「見返し横丁」「かくれんぼ横丁」はありません。他にも例外が一つある以外を除き、「見返り横丁」「見返し横丁」「かくれんぼ横丁」はありませんでした。

 一つだけが例外で、それは1994年の「神楽坂・楽楽散歩」(編集は神楽坂地区まちづくりの会、編集協力は東京理科大学建築学科沖塩研究室、発行は新宿区都市整備管理課)で、ここには「本多横丁」以外に「見返り横丁」と「かくれんぼ横丁」がでてきます。

 では書籍では? 1997年の「まちづくりキーワード集」(著者と出版は神楽坂地区まちづくりの会)には、「かくれんぼ横丁と「見返り横丁」がでてきます(下図)。一方、渡辺功一氏の「神楽坂がまるごとわかる本」(けやき舎、2007)では「かくれんぼ横丁」はありますが、「見返り横丁」「見返し横丁」はありません。西村和夫氏の「雑学 神楽坂」(角川学芸出版、2010年)ではこの「かくれんぼ横丁」「見返り横丁」「見返し横丁」は全てでていません。

まちづくりキーワード集

まちづくりキーワード集(1997年、神楽坂地区まちづくりの会)

 雑誌は? 「ここは牛込、神楽坂」では「路地・横丁に愛称をつけてしまった」で「名前がついている『見返り横丁』」とでてきます。また、2007年「神楽坂まちの手帖」15号「『最深版』神楽坂の路地・その魅力のすべて」では「かくれんぼ横丁」はでますが、「見返り横丁」「見返し横丁」はでてきていません。

 つまり「見返り横丁」と「かくれんぼ横丁」は、1994年の地図「神楽坂・楽楽散歩」と1997年の本「まちづくりキーワード集」以外にありません。見返り横丁になったのか、その由来もわかりません。

 これからは、まあ、でたらめですが、「神楽坂地区まちづくりの会」 などが横丁や坂をまとめることになって、誰かが「これは個人的な(か昔からの)横丁だけど、見返り横丁というものも使っている」といい、ほかの人たちも「へぇー、なるほど」と答え、あっという間に定着したのではないでしょうか。

 この「神楽坂地区まちづくりの会」のメンバーは、山下修、立壁正子、江口素子、上田邦彦、坂本二朗、荘司雅彦、寺田 弘、保坂公人、渡辺行将、渡邊義孝、矢野貞子、山口幸二などの、そうそうな人物で、「かくれんぼ横丁」の名付け親、森川安雄氏もその一員でした。おそらく「かくれんぼ横丁」と同じ頃に、こんな会合で、森川さんなどのだれかが「見返り横丁」を推したか、知っているといったのでしょう。

神楽坂・楽楽散歩と新楽楽散歩

文学と神楽坂


 善國寺の正面の歩道には「神楽坂・楽楽散歩」という地図がありました。下は2013年に撮った地図。おそらく1994年(平成6年)ごろに作成されたと思います。

神楽坂楽楽散歩

神楽坂楽楽散歩。2013年1月。

 以来、特別に見ていなかったのですが、2019年6月、360°パノラマ写真の関係でもう一度見てみると…

楽楽散歩。2019年6月

楽楽散歩。2019年6月

 絵が薄れ、コンクリートにひび割れがはいり、文字も読めない。「神楽坂・楽楽散歩」はまるで見えません。
 しかし、令和2年(2020年)7月、再度新しい神楽坂・新楽楽散歩ができました。下図は大きく拡大できます。

神楽坂・新楽楽散歩

 さらに、以下の地図は、神楽坂地区まちづくりの会の「神楽坂・楽楽散歩」(新宿区都市整備部管理課、平成6年、1994年、新宿区図書館)でした。

神楽坂・楽楽散歩

神楽坂・楽楽散歩

 結局、地図は3個ありました。1つは風雨にさらされ、読めない「神楽坂・楽楽散歩」。2つ目は「神楽坂・楽楽散歩」で、平成6年、神楽坂地区まちづくりの会が作成、新宿区図書館に寄贈したもの。3つ目は令和2年の「神楽坂・新楽楽散歩」です。
 1つ目と2つ目は、よく似ているのですが、大胆にもまた微妙にも違っています(この写真は巨大に拡大することも可能)。だれか原図をもっていないでしょうか? 25年前のものなので、難しい? まあ、だからこそ、令和2年の「神楽坂・楽楽散歩」になったのですね。
 山下さんが描いた別の「楽楽散歩」も見つかりました。ですが、これも神楽坂地区まちづくりの会の「神楽坂・楽楽散歩」と同じものです。
 2つ目の「神楽坂・楽楽散歩」の文章は次の通り。これも1つ目の地図とは少し違っている。

<この地図の使い方>
 この『神楽坂・楽楽散歩』は、神楽坂地区(神楽坂1~6丁目)とその周辺で、歴史的な社寺・特徴的な坂・趣のある横丁など、私たちの暮らしている神楽坂の「まちの魅力」を集めてみました。
 この地図を片手に、まちの魅力の再認識や新たな発見をしてください。

 この地図では、2つの散策コースを設けました。
 「石畳・料亭コース」は、神楽坂通りの北側を歩くコース。石畳の路地や横丁などを巡ります。
 「歴史・文化コース」は、神楽坂通りの南側を歩くコース。歴史的な寺社などを巡ります。
 2つのコースとも、JR飯田橋駅と地下鉄東西線神楽坂駅を結んでいます。どちらの駅から歩き始めてもかまいません。ゆっくり歩いて1時間程で歩けるコースです。
 神楽坂の魅力を味わいながら散策してみてください。コース以外の横丁を歩いてみると、また違った魅力が隠れているかもしれません……。