銀の急須

銀の急須

時々、この銀の急須をとり出してきては磨いています。手前は、宝瓶(ほうひん)という玉露のためのもので、温度の低いお湯を入れるため、持ち手が必要ないそうです。

これは私が譲り受けた、華やかかりし頃の思い出の品です。今から100年前、私の曾祖父は神楽坂で青木堂という店をやっていたそうです。(当時の、本郷の青木堂との関係は全くないそうです)

フランスから食料品などを輸入、販売する宮内庁御用達の店で、そこには明治の文豪たちが訪れていたとか。田山花袋の小説にも、短い文章ですが登場しています。

東京で五本の指に入るほどの財産を一代で築き、そして、すべてを失ってしまったそうです。子供の頃から何度も同じ話を聞かされていたので、私自身、遠いフランスという国に憧れを持つようになったのだと思います。

ずっとお店があって、お金持ちのままでいたら、今頃は・・・。磨き終えればまた、ため息とともにしまい込むのです。

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