文学と神楽坂

　最初は「高田穴八幡御(お)旅所(たびしょ)」について。下の絵では四角で囲んだ場所が３つあり、上は「毘沙門堂」、右は「こんぴら」、左下は「高田八まん御旅所」です。また、この画讃には『月毎の寅の日には参詣夥しく植木等の諸商人市をなして賑へり』と書かれています。
　御旅所とは神（一般には神体を乗せた神み輿こし）が巡幸の途中で休憩や宿泊する場所です。もともとは延享２年（1747）８月、放生寺拝借地として設定し（御府内沿革図書）、「宝暦９年（1759）までは隔年神楽坂の御旅所へ神幸あり、産町子々よりも花出し踊り邌物を出せしが、同じ年より中絶す」（東都歳時記秋乃部）。なお、放生寺の別名は高田穴八幡宮です。
　この「高田八まん御旅所」は、安政４年改「市ヶ谷牛込絵図」（1857年）では「穴八幡旅所」ときちんと書いてあります。西早稲田にある穴八幡宮からの神輿がこの御旅所にやって来て、神輿はよく奏し、これが神楽坂の名前になったという説があります。
　この御旅所の場所はヤマダヤや丸岡陶苑などがある場所でした。

　ちなみに1860年、御旅所はもうなくなっています。下に青色の代地の隣にあったはずです。いったいどうしたのでしょうか。不思議です。

　しかし、「不思議です」と書いていながら、明治６年には御旅所はまだありました。小栗横丁を向いて、現在は「神楽坂かつのとうふ」などがあります。

沽券地図（第三大区五小区）明治6年 小栗横丁付近