川柳江戸名所図会⑧|至文堂

文学と神楽坂

 早稲田とミョウガについて。

早 稲 田

神田上水の流域の低地は、農地となっていたものであろう。
  押合目白茶屋で見る早稲田  (四六・32)
目白の高台にある不動参詣者が、田圃を見下ろす。
 この辺りは茗荷の名産地であった。
   早稲田の畑槃特が墓のやう           (八九・38)
   はんどくの墓所目白の近所也          (四二・12)
 槃特は周利槃特といい、釈迦の弟子の一人。魯鈍な男で、この男の死後、墓から生えたのが茗荷で、茗荷を食うと物忘れするとか、馬鹿になるとかいう。
   関口は馬鹿になる程作るとこ          (三七・3)
 関口辺りも作ったらしい。
   鎌倉の波に早稲田の付ヶ合せ          (一二九・28)
 鰹の刺身に茗荷の付け合わせ。
   馬鹿な子の出来る早稲田の野良出合       (一一八・21)
   馬鹿で芽をふく早稲田の也         (一〇二・22)
   はんどく文珠尻からげ          (宝十松3)
 前句は「さま/”\な事」。諺に「槃特が愚痴も文珠の智恵」という。愚者も智者も等しく仏果を得るということであるが、さて此句は、槃特は悠々としていて、文珠は獅子に乗ったりして忙しく走り廻るようすを言ったものか、または植物の若荷に対し、何か文珠にたとえられる植物があって、諺をふまえての対比をねらったものか、よくわからない。

文京区目白台

神田上水 徳川家康が開削した日本最古の上水道。水源は井の頭池、善福寺池、妙正寺池の湧水。この水を大洗堰 (文京区関口) によりせき止め、小石川後楽園を経てお茶の水堀の上を木樋で渡し、神田、日本橋方面に供給。1898年淀橋浄水場開設に伴い、1901年一般への給水を停止。
押合 押し合う。押合う。両方から互いに押す。
目白 ここは文京区目白台でしょう。右図を。
茶屋 ちゃや。旅人が立ち寄って休息する店。掛け茶屋。茶屋小屋。茶店
不動 かつて目白不動で有名な新長谷はせでらが現在の関口二丁目にあり、 徳川家光がこの地を訪れた際に、城南の目黒に対して「目白とよぶべし」といわれたという。
茗荷 ミョウガ。ショウガ科の多年草。食用。園芸用。薬用
槃特はんどく周利槃特 しゅりはんどく。釈迦の弟子の一人で、自分の名前も覚えられないほど愚かな人間だった。
釈迦 しゃか。仏教の開祖。現在のネパール南部で生まれた。生年は紀元前463~383年から同560~480年など諸説ある。
魯鈍 ろどん。愚かで頭の働きが鈍いこと。
関口 文京区西部の住宅商業地区。山手台地に属する目白台と神田川の低地にまたがる。
鎌倉の波 「鎌倉の波」がどうして「鰹の刺身」になるのか、わかりません。代表的な一品をあげたのでしょうか。
野良 田や畑
出合 であい。男女がしめし合わせて会うこと。密会。出合い者は、出合い宿で売春をする女。
芽をふく を吹く。草木が芽をふく。物事が成長・発展するきざしを見せる。
 イク。そだつ。そだてる。はぐくむ。そだてる。成長する。
文珠 文殊。文珠。もんじゅ。大乗仏教で菩薩の1人。釈尊の入滅後に生れた人物で、南インドで布教活動。普通には普賢菩薩とともに釈迦如来の脇侍として左脇に侍し、獅子に乗る形にも造られる。
尻からげ 尻絡げ。着物の後ろの裾をまくり上げて、その端を帯に挟むこと。尻はしょり。尻端折り。
仏果 仏道修行の結果として得られる、成仏という結果。

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