『拝啓、父上様』1話から
石段(勝手口外)
一平、ゴミバケツにゴミを開ける。
戻ろうとした時、石段上から、
女の声「ア!」
ふり向いた一平。
音楽――中断。
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一平の目に、
石段上から夕陽の中を、無数のリンゴがころがってくる。
底の抜けたダンボールを手にもって、石段上に呆然と立つ少女。
一平。
あわてて落ちてくるリンゴを拾う。
少女、かけ下りつつリンゴを拾う。
コロコロ石段をころがる無数のリンゴ。
一平走りつつリンゴを拾う。
少女も。
一平、急いで勝手口へとびこみ、カゴを持って出てその中にりんごを集める。
少女にカゴを示す。
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勝手口 一平が働く料亭「坂下」の勝手口は、実は鳥茶屋別亭の玄関口でした。
少女、頭を下げ、拾ったリンゴをそのカゴに入れる。
階段を上り、又かけ下り、懸命にリンゴを集める二人。
しばらく。
――。
漸くその作業が終了する。
一平、少女と初めて向き合って立つ。
少女――美しい。
少女「メッシ! メッシ・ボクゥ!」 |