現在は元禄寿司などが入っていますが、戦前は盛文堂などの店舗がありました。
盛文堂は本屋だけではなく、出版も行っています。『英文朗読法』(1897年)『粋客必携音曲集』(1886年)『薩摩琵琶歌大全』(1909年)『信州政党史』(1922年)などです。
新宿区郷土研究会『神楽坂界隈』(平成9年)の岡崎公一氏の「神楽坂と縁日市」の「神楽坂の商店変遷と昭和初期の縁日図」では、平成8年には「元禄寿司」があり、一方、昭和5年頃には「成文堂」(盛文堂の誤り?)、「西村毛布店」、「ローヤル洋品」の3店がありました。
残念ながら昭和12年の火災保険特殊地図(都市製図社)はどうなっているのか不明ですが、おそらく大空襲の時に燃えるまで盛文堂は同じように営業していたのでしょう。
正宗白鳥は昭和27(1952)年、72歳の時に「神楽坂今昔」を書き、
(現在の早稲田大学に入学する前に神楽)坂の上に有つた盛文堂といふ雑誌店で、新刊の「國民之友」を買つたことも、今なほありありと記憶してゐる。 |
と書いています。
また、稲垣足穂氏は「横寺日記」(昭和30年)で
八月七日 土曜 昨夜新宿の真暗な街上で、六日月、その左かたに落ちかかっている天ノ河、さそり、射手を見た。きょうお午に床屋の椅子に掛けて鏡を見ていたら、盛文堂の棚に山本清一博士の『星座の手ほどき』があったことに気がついた。 |